認知症を遠ざけよう

夏休みも開け1ヶ月が経ちますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。先日当院では、市民の皆様に向けた健康講座が開かれました。今回で第11回を迎え、昼間の時間にも関わらず多くの方に参加していただきました。テーマは「認知症」。今日は、認知症についておはなししてみようと思います。

現時点では残念ながら、「こうすれば認知症にならない」という方法はありません。しかし最近の研究から「どうすれば認知症になりにくいか」ということが少しずつわかってきました。


認知症を予防する対策は大きく分けて2種類で、日々認知症になりにくい生活習慣を行うものと、認知症で落ちる3つの能力を簡単なトレーニングで鍛えるものとがあります。これらを長く続けていくことで、認知症を発症せずにすごせたり、認知症になる時期を遅らせたりできる可能性が高まります。今日は、認知症になりにくい生活習慣についてお話ししたいと思います。

  1. 認知症になりにくい生活習慣

 

f:id:mokaho_iryou:20191003113748p:plain

認知症の多くは、糖尿病や脳血管障害など生活習慣から引き起こされる病気との関連が強く、それらの予防や治療が間接的な認知症予防となります。脳の状態を良好に保つためには食習慣や運動習慣を変えること、認知機能を重点的に使うためには対人接触を行うことや知的行動習慣を意識した日々をすごすことが重要だと言われています。

 

認知症を予防する食事のポイントは、高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病などのメタボリックシンドロームを予防する食事が重要です。

みなさん、マインド食(マインドダイエット)ってご存知ですか?シカゴのラッシュ大学メディカルセンターの研究者らが、アルツハイマー病の発症リスクを低下させるとして発表した食事法で、日本でもよく知られている地中海式食事法(Mediterranean diet)と、アメリ国立衛生研究所で考案されたDASH(高血圧改善のための食事法アプローチ)の2つを組み合わせた食事法のことです。

 

*地中海式ダイエット*

f:id:mokaho_iryou:20191003114130p:plain

「地中海式ダイエット」は、野菜・果物・豆類などの植物性食品と、地中海地域の特産のオリーブオイル、新鮮な魚介類などを組み合わせた食事スタイルで、肥満やメタボの予防効果があるといわれているものです。

 

*DASHダイエット*

f:id:mokaho_iryou:20191003114236p:plain

「DASHダイエット」は高血圧の予防・改善のために開発された食事スタイルで、玄米や全粒パンなどの全粒穀物や、低脂肪の肉や乳製品、ナッツや豆類などを積極的にとることを勧めています。

 

*マインドダイエット*

「マインド ダイエット」の方法はシンプルで、10種類の健康に良い食品を積極的にとり、5種類の健康に悪い食品をなるべく避けるというものです。

日本人にとって馴染みの薄いところを水色にしてみました。日本食(魚・野菜・海草・漬物・大豆製品・きのこ・いも・果物)もよいとされています。

f:id:mokaho_iryou:20191003114420p:plainf:id:mokaho_iryou:20191003114420p:plain



 

一方、脂身の多い肉やバター・チーズなどの乳製品など、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は、動脈硬化を進展させ脳の健康にも悪いので、なるべく控えた方が良いでしょう。

f:id:mokaho_iryou:20191003114454p:plain

コミュニケーションは簡単なようで、難しいものです。ひとり暮らしだと1日中あるいは1週間、誰とも話さないことがあるかもしれません。ひとりで過ごす時間も大事ですが、なんらかのコミュニティーに所属することでコミュニケーションがはかりやすくなり、役割をもったり生活に張りが出たりすることがあります。電話やインターネットを使った会話でも良いので、コミュニケーションをとる機会を設けてみてください。町内会や老人会、趣味のサークルやボランティアなどに参加して知らない人と話すのも、気を遣ったり頭を使ったりするため刺激になります。

f:id:mokaho_iryou:20191003114638p:plainf:id:mokaho_iryou:20191003114730p:plainf:id:mokaho_iryou:20191003114656p:plain

日記を書く、新聞を読むという身近なことでも十分な知的活動になります。

過去の日記を読み返せば回想にもなりますし、新聞を読むだけでなく、コラムを書き写すなどの工夫もできます。クロスワードパズルやゲームなどもちょっとした時間でできる良さがあります。楽器を演奏したり、絵を描いたりという芸術活動や芸術鑑賞はもちろんのこと、農作業や料理も手先と頭を同時に使うので効果があります。仕事を続けるのもこれからの高齢者には良い方法ですが、現役時代とは違う仕事にチャレンジするほうが刺激になります。

f:id:mokaho_iryou:20191003114904p:plain

f:id:mokaho_iryou:20191003115003j:plain

認知症予防との関連で最も注目されているのが睡眠です。

起きている間、脳は常に働いています。身体は休憩などで休ませることができても、脳だけは一時も休むことはありません。充分な睡眠が取れないと脳の疲労は蓄積する一方となり、脳機能の低下、そして認知機能の低下を助長させる可能性があります。睡眠はそんな脳が休息し、壊れた細胞を修復できる唯一の時間なのです。 毎日の睡眠を軽視せず、脳に十分な休息を取らせることが認知症予防には大切です。また、日中に短時間の昼寝をすることも良いとされるようになってきています。心地よく眠りにつけるよう、好きな香りをアロマやお香で楽しんだり、音楽を聴いたりしてもいいですね。

f:id:mokaho_iryou:20191003115051p:plain

週に2~3回、少し息がきれるくらいの強度の運動が良いとされ、特に有酸素運動がお勧めです。ラジオ体操をすること、散歩で景色を楽しむこと、グランドゴルフで作戦を練りながらプレーすること。こうした運動をすることによって脳が活性化し、脳の機能を鍛えることにも繋がります。特に、身体を動かしながら(=身体運動)何かを考える(=認知課題)ことは、脳の多くの機能を同時に使います。これが認知症予防に大変良いとされていますので、意識的に取り入れてみてください。

f:id:mokaho_iryou:20191003115139p:plain

たとえば、散歩をしながら昨日や今日の出来事を思い出す。

日常の出来事を思い出すということは、脳の短期記憶をつかさどる部位を刺激するだけではなく、食事のことを思い出せばその情景や香り、味、食感などさまざまな感覚をつかさどる部位も刺激され、人と話したことを思い出せば人の顔、声、話した内容を長期記憶する部位も刺激されます。

 

f:id:mokaho_iryou:20191003115220p:plain

他には、ラジオ体操と一緒に一人でしりとりもしてみましょう。体の動きを思い出しながら体操をし、音楽も聴き、しりとりもするので、実にたくさん脳を使います。実際やってみると少し疲れるほどだと思います。しりとりに限らず、暗算をしてみたり俳句を考えるなど、ご自身が楽しめるものがいいでしょう。楽しいという感情は、脳を活性化するともいわれています。

 

コグニサイズってご存知ですか?

コグニサイズとは、国立長寿医療センターが開発した、運動(エクササイズ)と認知課題(コグニション)を組み合わせた、認知症予防を目的とする取り組みを表した造語です。

コグニサイズにはさまざまな運動があり、例えば「コグニステップ」は、左右の脚のステップに合わせて数字を数え、3の倍数になったら手をたたくというもの。やってみると難しいのですが、自宅で簡単に行えます。もしよければみなさまも取り入れてみてはいかがでしょうか?

 

f:id:mokaho_iryou:20191003115313p:plain

今日は、認知症になりにくい生活習慣についてお話させていただきました。何よりも大切なのは早期発見と早期からの予防です。本人のみならずご家族も一緒に対策をたてていっていただければと思います。